当研究室では有機化学をベースとしつつ電気化学、光化学に関連した様々なテーマの研究を行っています。大きな柱として
①デンドリマーと呼ばれる樹状高分子を用いた発光材料の開発と有機EL材料・レーザー材料・センサー材料への展開 ②リチウムイオンやナトリウムイオン二次電池向けなど新規な二次電池活物質の開発 ③有機物に印加した電界を触媒とした新規な有機反応の開発 の3つのテーマに力を入れています。 主に①のテーマについてQ-コロキウムで講演した際の動画がYoutubeにアップされていますのでもっと詳しい説明を見たい方はご覧下さい。Link |
デンドリマーに関連したテーマ |
塗布型有機EL材料有機EL素子はすでにスマートホンやTVのディスプレイとして市販されるようになっていますが、より安く大面積化を可能にすると期待されている”塗布型”材料の実用化には至っていません。当研究室ではカルバゾールデンドリマーを中心とした新規塗布型発光材料を開発し高効率な有機EL素子へと展開しています。特に近年注目を集めている熱活性化遅延蛍光(TADF)材料に関しては初の塗布型デンドリマー材料を発表するなど注目を集めています。近年は有機ELだけでなく電気化学発光セルのようなことなるデバイスへも展開しています。 関連論文 ・Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 5677. (高被引用文献:Top 1%) ・Chem. Commun. 2017, 53, 2439. (Most downloaded article) ・Sci. Rep, 2017, 53, 2439. (Top100 chemistry article) ・ACS AMI, 2018, 10, 33343. ・Polym. Chem. 2022, 13, 2277-2284. (Back Cover) ・Aggregate 2023, e405(1-8). 共同研究先 九州大学 藤田先生、東京大学 中山先生、山形大学 横山先生、 名古屋大学 竹延先生、ミュンヘン工科大学 Ruben Costa先生 プレスリリース 1000時間以上の寿命を示す電気化学発光セルを開発ーバイオマス由来電解質とデンドリマーを使用することで長寿命な電気化学発光セルを実現ー |
発光ラジカル材料の開発
一般的な有機物は基底状態が一重項であるため、励起状態が一重項と三重項状態をとります。これに対して基底状態が二重項(ラジカル)の発光材料は励起状態も二重項のみから発光することから有機EL等の発光デバイスにおいてスピン統計則を打破する新規な材料群として注目されています。我々のグループでは、発光の高効率化・安定性の向上を目的として新規な発光ラジカル材料の開発しデバイス応用へと進めています。特にデンドリマーを修飾するアプローチは塗布型デバイスの開発につながるため注目を集めています。
関連論文 ・Angew. Chem. Int. Ed. 2023, 62, e20230255 (1-7)(Back Cover) ・Chem. Commun. 2022, 58, 13443-13446. (Inside Front Cover) ・ Faraday Discuss. 2023, in press. 共同研究先 ダラム大学(イギリス) Andrew P. Monkman先生、産業技術総合研究所 細貝拓也博士、京都大学 佐藤徹先生 プレスリリース 安定的で高効率発光を示すラジカルを開発ー樹状高分子を結合することで発光効率と安定性が向上ー |
デンドリマーの集合化やセンシング材料としての展開
関連論文
・Chem. Commun. 2018, 54, 2534. ・Commun. Chem. 2020, 3, 118 (1-8). ・Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59, 12674-12679. 共同研究先 筑波大学 山本先生、西堀先生、京都大学(現東京大学) 細野先生 単分子ダイオードカルバゾール骨格をhead-to-tail型につなげたオリゴマーは双極子モーメントを持ち、分子の両側にHOMOとLUMOが分離したような特徴的な電子構造も持ちます。このような分子の単一分子電気伝導度測定をMCBJ法(mechanically controllable break junction)によって行ったところバイアス方向によって伝導度が異なる整流性を示すことが分かりました。これは、伝導軌道であるHOMOが0バイアスや負バイアスでは分子の片側に局在化しているのに対して正バイアスでは分子全体に広がり両側の電極とカップリングすることによって急激に伝導度が上昇することによります。
関連論文 Nanoscale 2018, 10, 19818. 共同研究先 大阪大学 夛田先生 |
高電界下での新しい合成反応の開拓 単分子ダイオードの項で述べたように分子に巨大な電界を印加すると軌道が変形したり、双極子モーメントに応じて安定化/不安定化が引き起こされます。分子の基底状態や遷移状態のエネルギーを電界によって制御すること事ができれば望みの(選択的)反応のみを加速させることが可能になります。アルブレヒト研究室では多数の分子に電界を印加し、連続的に新しい化学反応を引き起こす方法論/手法の開拓を行っています。本研究はJST-さきがけ研究の支援を受けて行っている新しいテーマです。
二次電池正極材料の開発
モバイル機器の普及やエネルギー貯蔵の必要性の高まりによって二次電池の改良や新材料の開拓が日々行われています。例えば、リチウムイオン二次電池に変わってナトリウムイオン電池が注目されています。しかし、一般的に正極材料としては資源的に制約のある金属化合物が使われています。これを安価な石油やバイオマス由来の有機化合物で代替できれば大きなインパクトがあります。有機化合物は比重が小さいことや電位が低いことから金属化合物と比べてエネルギー密度等で不利とされていますがこれを覆すべく新規材料の開発を行っています。本研究は先導物質化学研究所 岡田研究室と協力して行っている新しいテーマです。
関連論文 Electrochemistry 2022, 90, 117005 (1-7). |